ここに来ればこどもの頃の記憶が蘇る。
田沢湖町立生保内小学校潟分校は、秋田県仙北市田沢湖にあった生保内小学校の分校。昭和四十九年に廃校となっていた木造の小学校校舎が修復され、平成十六年に「思い出の潟分校」として一般公開。校庭や校舎、教室の内部にいたるまですべて当時のままで残されており、懐かしい雰囲気を感じる。
中に入ると下駄箱、そして左右に延びる長い廊下がある。左手には体育館、右手には教室と二階に続く階段が見える。大きな窓からは太陽の光が射し込み、年月とともに濃くなった木目が飴色に輝く。教室の椅子に腰を掛けると、今にも先生が廊下からやってきて授業がはじまりそうだ。隣を見れば友達の顔まで目に浮かぶ。廊下を歩けば、そこを駆け回るこどもたち。そしてそれを注意する先生。その声までも聞こえてくる。
「思い出の潟分校」。時の経過を忘れたこの場所だからこそ、私たちが失った大切なものが今もまだ残されている。